技術・人文知識・国際業務

「技術・人文知識・国際業務」は、専門的・技術的在留資格に区分される在留資格の中では、最も利用されている在留資格です。いわゆるオフィスワーカーの職種で、一般的なサラリーマンのイメージです。留学生などが大学等を卒業して日本の会社に就職するときは、この在留資格を取得するケースが多いと思います。

在留資格該当性(活動範囲)
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動
(入管法別表一の表の教授の項、芸術の項及び報道の項の下欄に掲げる活動並びにこの表の経営・管理の項から教育の項まで及び企業内転勤の項から興行の項までの下欄に掲げる活動を除く。)

 

1.「技術・人文知識」についての基準
「技術・人文知識」についての基準としては、(A)学歴・職歴要件(B)報酬要件の2つになります。
学歴・職歴要件としては、職務上必要となる技術または知識について、@関連する科目を専攻して大学を卒業するか、それと同等の教育を受けたこと、A関連する科目を専攻して本邦の専修学校を専門課程を修了すること、B10年以上の実務経験があることのいずれかが求められます。
※実際の実務上、Bの10年以上の実務経験を証明して取得することは、ハードルが高くなります。過去に所属していた会社すべてで、職歴の証明をしてもらわなければなりません。倒産や廃業してしまった会社があるような場合、証明すること自体が無理になってきます。
報酬要件としては、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等以上でなければなりません。ここでいう「報酬」とは、一定の役務に対する対価として受けるものをいい、通勤手当・扶養手当・住宅手当等は含まれません。この報酬額については、具体的な金額の基準は設定いされていませんが、実務上は、東京圏では17万円以下となると許可の可能性が低くなります。

 

2.「国際業務」についての基準
「国際業務」についての基準としては、(A)業務該当性(B)職歴要件(C)報酬要件が規定されています。
業務該当性は、上陸許可基準に規定されている「翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務」に該当売ることである。職歴要件としては、従事する業務について3年以上の実務経験を有することである。ただし、大学を卒業した者が通訳等の業務に従事する場合は、この3年以上の実務経験は求められません。報酬要件は、技術・人文知識の要件と同じとなります。

 

3.在留期間と更新
技術・人文知識・国際業務の在留資格の在留期間は「5年・3年・1年又は3月」となっています。その在留期間が付与されるかは、次のとおりにまとめられます。(審査要領)

期間

要件

5年

次の@、A及びDのいずれかに該当し、かつ、B又はCに該当するもの
@ 申請人が入管法上の届出義務を履行しているもの
A 学齢期の子を持つ親の場合には、子が小学校または中学校にい通学しているもの
B 契約期間がカテゴリー1又は2に該当するもの
C B以外の場合は、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で3年の在留期限が決定井されている者で、かつ、日本において引き続き5年以上「技術・人文知識・国際業務」の在留資格にい該当する活動を行っているもの
D 就労予定期間が3年を超えるもの

3年

次の@、A、Bのいずれかに該当するもの
@ 次のいずれにも該当するもの
 1.5年の在留期間の決定の項のうち、@及びAに該当し、かつ、B又はCに該当するもの
 2.就労予定期間が1年以上3年以内であるもの
A 5年の在留期を決定されていた者で、在留期間更新の際に、次のいずれににも該当するもの
 1.5年の在留期間を決定されていた者で、在留期間更新の際に、次のいずれにも該当するもの
 2.就労予定期間が1年を超えるもの
B 5年、1年又は3月のいずれにも該当しないもの

1年

次のいずれかに該当するもの
@ 契約期間がカテゴリー4に該当するもの
A 3年の在留期を決定されていた者で、在留期間更新の際の5年の在留期間の項の@又はAに該当しないもの
B 職務上の地位、活動実績、所属機関の活動実績から、在留状況を1年に1度確認確認する必要があるもの
C 就労予定期間が1年以下であるもの

3月

就労予定期間が3月以下であるもの

 

4.「技術・人文知識・国際業務」の特徴
この在留資格の特徴は、「技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務」という活動内容にあります。「技術・人文知識・国際業務」では、学修した内容又は実務経験と就労する業務の関連性が求められます。他方で、企業は大学卒業者を総合職として採用しています。日本の採用慣行では、総合職として採用した者でも新人研修として一定の間、現場で実際に作業してもらうことがあります。また、総合職については、様々な部署を広く経験させながらキャリアを形成していくというジョブローテーション制度が採用されていることもあります。
このような日本の労働慣行のため、@Aのような問題点が出てきます。
@ 新人研修として現場作業をさせることは可能か?
@については平成27年12月に入国管理局から次のような見解が出ています。「それが企業における研修の一環であって当該業務に従事するのは採用当初の時期に留まる、といった場合には許容されます」このように、日本人従業員も含めて、入社後の一定期間における研修は、必要な業務とみなされ問題ないということです。ただし、当該期間が合理的な期間になっているかは審査されます。
A 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で幅広い業務を経験させることはできるか? 
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、平成26年の入管法改正で「技術」と「人文知識・国際業務」が統合され、在留資格として一つになりました。そのため「技術」の分野で活動を行うことを予定して「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の許可を受けた者が、その後、配置転換等で「人文知識」や「国際業務」のに該当する活動を行うようになった場合も、資格外活動違反や在留資格取消しの対象にはなりません。「技術・人文知識・国際業務」の活動に該当する範囲であれば、ジョブローテーションによって配置転換することも可能と解されます。

 

 

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