特定技能
平成30年の入管法改正により新設された在留資格です。中小企業や小規模事業者をはじめとした人手不足が深刻化しており、建設現場など特定の分野では特に深刻となっています。日本経済と社会基盤の持続可能性を阻害する可能性が生じるというところまできている、という政府の認識が背景となっています。
今までの日本の入管法では、肉体労働や単純労働とみなされる職種についての外国人は受け入れないという政策をとってきました。そこで、入管法を改正して専門的・技術的な知識や素養を活かして働く一部の専門的な職業以外でも、幅広く外国人材を受け入れていく仕組みを作り、深刻な人手不足を解消していくというのが今回の在留資格創設の流れです。
在留資格該当性(活動範囲)
1 法務大臣が指定する本邦の公私の機関との雇用にい関する契約(第2条の5第1項から第4項までの規定に適合するものに限る。次号においても同じ。)に基づいて行う特定産業分野(人材を確保することが困難な状況にあるため外国人により不足する人材の確保を図るべき産業上の分野として法務省令で定めるものをいう。同号においても同じ。)であって法務大臣が指定するものに属する法務省令で定める相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する活動
2 法務大臣が指定する本邦の公私の機関との雇用に関する経緯役に基づいて行う特定産業分野であって法務大臣が指定するものに属する法務省令で定める熟練した技能を要する業務に従事する活動
1.新しい在留資格への追加
@ 特定技能1号
不足する人材の確保を図るべき産業上の分野に属する「相当程度の知識又は経験を必要とする技能」を要する業務に従事する外国人が対象
A特定技能2号
同分野に属する「熟練した技能」を要する業務に従事する外国人が対象
2.外国人材の受け入れ分野
特定技能1号・2号の資格者が本邦で活動できるのは、入管法別表第1の2の資格の規定にある通り、「特定産業分野であって法務大臣が指定するもの」に限られます。
<特定産業分野>
日本国内だけでは人材を確保することが困難な状況であるため外国人により不足人材の確保を図るべき産業上の分野として法務省令で定めるものをいい、以下の14分野と定められています。
1.介護分野 2.ビルクリーニング分野 3.素形材産業分野 4.産業機械製造業分野 5.電気・電子情報関連産業分野 6.建設分野 7.造船・舶用工業分野 8.自動車整備分野 9.航空分野 10.宿泊分野 11.農業分野 12.漁業分野 13.飲食料品製造分野 14.外食分野
3.技能水準と日本語能力の要件
<技能水準>
特定技能1号に求められる一定の技能水準とは、受け入れる分野での即戦力として活動するために必要な知識や経験を有することとし、各事業の所管省庁が定める試験等によって確認されます。。技能試験のレベルとしては、特定技能1号は特段の育成・訓練を受けることなく直ちに一定程度の業務を遂行できる水準の技能が求められることを踏まえ、初級技能者のための試験である「(技能実習における)3級相当の技能検定等の合格水準と同等の水準」とされています。原則、学科試験及び実技試験により実施されることになりますが、業種ごとの各省庁の判断によって、代替措置をとることで、どちらか一方のみとすることも可能です。ただし、実務試験だけをもって技能水準を確認することは認められていません。
(特定産業分野ごとの技能試験実施要領)
1.介護 2.ビルクリーニング 3.素形材産業 4.産業機械製造業 5.電気・電子情報関連産業 6.建設 7.造船・舶用工業 8.自動車整備 9.航空(※空港グランドハンドリング ※航空機整備) 10.宿泊 11.農業 12.漁業(※養殖業) 13.飲食料品製造 14.外食
(特定産業分野ごとの技能試験)
1.介護 2.ビルクリーニング 3.素形材産業 4.産業機械製造業 5.電気・電子情報関連産業 6.建設 7.造船・舶用工業 8.自動車整備 9.航空 10.宿泊 11.農業 12.漁業 13.飲食料品製造 14.外食
<日本語能力水準>
日本語能力水準は、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有することを基本としつつ、受け入れ分野ごとに業務上必要な能力水準を考慮して定める試験等によって確認するとしています。例えば、外食では、所管省庁の農林水産省が実施する日本語能力判定テストに合格するか、又は日本語能力試験N4以上の日本語能力が求められます。介護のように特別に介護業務に関連する日本語テストを課す分野もあります。
日本語試験(全分野共通) 日本語試験(介護分野)
<その他の要件>
上記の技能水準・日本語能力水準の他、以下の条件もクリアーしなければなりません。
@ 18歳以上であること
A 健康状態が良好なこと
B 退去強制の円滑な執行に協力する外国政府が発効した旅券を所持していること
C 保証金の徴収等をされていないこと
D 送り出し国で遵守すべき手続が定められている場合に、その手続きを経ていること
E 食費、居住費等外国人が定期的に負担する費用について、その対価として提供される利益の内容を十分に理解したうえで合意しており、かつ、その費用の額が実施相当額の適正な額であり、明細書その他の書面が明示されること
F 分野に特有の基準に適合すること
4.在留期限等
特定技能1号の在留期間は、1年・6月又は4月で、更新による上限は通算で5年となります。(家族帯同は認められません)
特定技能2号の在留期間は、3年・1年又は6月で、更新による上限はありません。(家族帯同が認められます)
※帯同する家族には、「家族滞在」の在留資格が付与されます。
特定技能で働く外国人は、フルタイムとしたうえで、原則、直接雇用となります。ただし、分野の特性に応じ、派遣することが必要不可欠である場合には、例外的に受け入れ機関が派遣元になり、派遣先へ派遣を行うことを認め、分野別基本方針に明記します。農業と漁業で派遣形態が認められています。
5.「特定技能所属機関(受け入れ機関)」と「登録支援機関」
特定技能所属機関とは
外国人と直接雇用契約を結ぶ企業(受け入れ機関)です。外国人が所属する機関は一つに限られます。複数の特定技能所属機関との雇用に関する契約は認められません。外国人と締結する契約は、報酬額が日本人と同等以上であることなどを確保するため、次のような基準に適合することが必要となります。また報酬は、預貯金口座への振込等支払額が確認できる方法によって行わなければなりません。
・労働関係法令、社会保険関係法令の遵守
・欠格事由に該当しないこと等
・支援計画に基づき、適正な支援を行える能力、体制があること等(特定技能1号の外国人の場合に限る)
支援計画とは、以下のような項目に関する計画です。
特定技能外国人を雇用する場合、職場生活、日常生活、社会生活において支援をしなければなりません。
次のような支援を自社で行えない場合は、登録支援機関に委託することになります。
@ 入国前の生活ガイダンス
A 外国人の住宅の確保
B 在留中の生活オリエンテーションの実施
C 生活のための日本語習得の支援
D 外国人からの相談、苦情への対応
E 各種行政手続についての情報提供
F 非自発的離職時の転職支援
G その他受け入れ機関は特定技能外国人を雇用した後も、随時又は定期的に次のような届出をしなければなりません。
・特定技能雇用契約にかかる届出書
・支援計画変更にかかる届出書
・支援委託契約にかかる届出書
・受け入れ困難にかかる届出書
・出入国又は労働に関する法令に関し不正又は不当な行為にかかる届出書
・受け入れ状況にかかる届出書
・支援実施状況にかかる届出書
・活動状況にかかる届出書
登録支援機関とは
受け入れ企業に代わって支援計画の作成・実施を行う機関のことです。登録支援機関は以下の基準に適合することが必要となります。
・欠格事由に該当しないこと
・支援計画に基づき、適正な支援を行える能力、体位性があること等
登録支援機関は、以下のような届出及び報告を登録支援機関の所在地を管轄する地方出入国在留管理局へ持参又は郵送によって行わなければなりません。
・登録事項変更にかかる届出書
・支援業務の休止又は廃止にかかる届出書
・支援業務の再開にかかる届出書
・支援計画の実施状況に関する届出
登録支援機関登録簿